テロメアを短くしないためのカギを握るのが「ストレス」です。 重いストレスを長期にわたって感じ続けと、テロメアの縮小ペースが速まると言われています。

ストレスが強いと、テロメラーゼが半分に!?

テロメア研究の第一人者で、2009年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞したアメリカの生物学者エリザベス・H・ブラックバーン博士は、心理学者のエリッサ・エペル教授(カリフォルニア大学)とともに、テロメアとストレスの関係を調べる調査を行いました。

その結果、ストレスの多さと、テロメアの長さに密接な関係あることが分かりました。 強いストレスを感じている人のテロメラーゼは、ストレスをあまり感じていない人の半分しかなかったのです。 テロメラーゼは、短くなったテロメアを長くする働きを持つ酵素です。

長期になるほど影響が大きい

この調査の参加者は、主に子供を持つ母親でした。とりわけ実験対象として重視されたのが、慢性的な病気を患う子供を自宅で介護する母親です。 子の介護をする母親は、テロメアの縮小が顕著だっといいます。しかも、介護が長期にわたるほど、テロメアが短くなっていました。

小さければ脅威にはならない

一方で、ストレスの量が小さく、期間も短ければテロメアにあまり影響が出ないという調査もあります。 米スタンフォード大学などによる研究では、少量のストレスは、テロメアのサイズとの関連性がとても低いことが確認されました。

つまり、日常生活の中で発生する普通のストレスは、テロメアの脅威にはならないということです。 ストレスは何でも悪いわけではなく、適度なストレスは自分を強くするためには必要という専門家も多いです。

ストレスへの反応

ストレスの大きさや期間とともに、もう一つ大事なのが、それを受け止める側の反応です。 人間はストレスに遭遇したときに、さまざまな感情や考えを抱きます。 その中身によってテロメアへの影響に大きな差が出てくるのです。

「脅威反応」と「チャレンジ反応」

ストレスに対する反応には大きく分けると「脅威反応」と「チャレンジ反応」があると言われています。 脅威反応とは、恐怖や不安などのネガティブな感情を抱くことです。 物事がどんどん悪くなっていくことを想像したり、 マイナス面の影響ばかりに目を向けたり、 といった反応です。 脅威反応を示すと、体が緊張した状態になります。 血管が収縮し、呼吸が浅くなっていきます。

ポジティブかネガティブか

一方、「チャレンジ反応」とは、ポジティブなリアクションのことです。 ストレスを一つの挑戦として受け止め、それを乗り越えるべく前向きに対処したいという気持ちを抱きます。 とても意欲的な姿勢ともいえます。 チャレンジ反応のときは血管が収縮することなく、体はリラックスした状態を保てます。

チャレンジ反応の人はテロメアが長い

ストレスへの反応は通常、「脅威反応」と「チャレンジ反応」が組み合わせっていますが、問題なのはその比率です。 カリフォルニア大学のエペル教授らの研究では、脅威反応が強い傾向がある人はテロメアが短いという結果が出ています。 逆にチャレンジ反応が強い人は、テロメアが長いといいます。