テロメアの縮小を遅らせる方法の一つは、運動です。適度な運動を日常的に行っている人は、テロメアが長いという調査結果が出ています。

運動はテロメアを長くする

米国ブリガム・ヤング大学は2017年、運動とテロメアの長さに深い関係があるとの研究を発表しました。 それによると、豊富な運動を日常的にしている人は、運動をしていない人に比べて、テロメアの長さという観点で9歳も若いと判定されました。

テロメアの若さに9歳の差

この研究は、米国保健福祉省の外郭団体が集めた約5800人の健康調査に基づいて行われました。 生活習慣とテロメアの長さに関する調査結果を、研究チームが詳しく分析しました。

その結果、日常的に活発な運動をする人と、運動をする習慣がなく活動的でない生活を送っている人のテロメアを比べたら、実質的に9歳相当の年齢差が認められたということです。

週5日以上、30~40分

ここでいう「活発な運動」とは、週5日以上、30~40分間のジョギング相当の運動を行う人と定義されています。

「ほどほどに運動」は効果が薄い

「活発な運動」派の人たちは、「ほどほどにしか運動しない」という人たちに比べても、テロメアレベルで7歳若かったといいます。 これらの結果から、運動を少しするだけでは効果があまり大きくないことが伺えます。 日常的に数十分以上の運動をすることが、アンチエイジングにつながるといえます。

どんな運動が良いか

運動といってもいろいろな種類がありますが、テロメアにとって良いと考えられているのは、有酸素運動です。

有酸素運動でテロメラーゼが2倍に

2015年にドイツで行われた調査研究では、有酸素運動を行った人はテロミラーゼの値が増えていました。 実験では、参加者に45分間の有酸素運動を週3日してもらい、それを6か月継続しました。 その結果、テロメラーゼの値が2倍になったのです。

ヨガやピラティスなど

有酸素運動は、呼吸によって酸素を取り込みながら行う運動です。ヨガやピラティスがこれに該当します。ランニングやウォーキング、水泳、ダンスなども有酸素運動です。

高強度インターバル・トレーニング(HIT)

この実験で、もう一つテロメラーゼを増やす効果が確認されたのが、高強度インターバル・トレーニングです。 これは「運動」と「休憩(インターバル)」を交互に繰り返すエクササイズです。

「筋トレ」と「休憩」を交互に

高強度インターバル・トレーニングでは、やや激しい運動を数十秒間行い、その後数十秒休み、また運動するといった具合で、トータルで数十分くらい続けます。小刻みに休憩を挟むのがポイントです。 運動の種類は、筋トレ、ランニング、サイクリングなど何でも構いませんが、一般的には筋トレを採用する場合が多いようです。

HIT

高強度インターバル・トレーニングは英語ではhigh-intensity interval trainingといいます。略して「HIIT」または「HIT」と呼ばれます。日本でも注目度が高まっており、スポーツジムが積極的に取り入れています。

単純な筋トレは効果が薄い

一方、このドイツの実験では、単純な筋トレ(レジスタンス運動)では、テロメラーゼを増やす効果は確認できなかったといいます。 同じ筋トレをするなら、HITのように休みを入れながら行ったほうが良い、ということを示唆しています。

「組み合わせ」の効果は絶大!?

運動が持つテロメアへの効果について、もう一つ注目されているのが、複数メニューの「組み合わせ」という観点です。 いつも同じ運動をするのでなく、いくつかの種目を組み合わせることが、テロメアにとって良いという調査結果が出ています。

これは、ミシシッピ大学が2015年に発表した研究で明らかになりました。 同大学のジェレミー・レネキー教授らは、米政府が実施した数万人規模の健康調査をもとに、ふだん行っている運動の種類の多さと「白血球内のテロメアの長さ」の関連を調べました。

筋トレ、ランニング、軽運動

調査では、運動の種類をおおざっぱに「筋トレ」「ウォーキングのような軽い運動」「ランニングのような活発な運動」「通勤・通学中の歩行または自転車利用」の4つに分類。これら4つを全てこなしている人たちは、1つもやっていない人たちに比べると、テロメアが極端に少ない人の割合が59%も少ないことが分かりました。

また、4つのうち3つをこなしている人たちは、1つもやっていない人たちに比べると、テロメアが極端に少ない人の割合は29%少ない、という分析結果が出ました。

とくに中高年に良い影響

テロメアが極端に少ないということは、重い病気にかかるリスクが高いことを意味します。 そんな高リスクな状態にある人の割合が、豊富な運動をしている人たちほど少ないということです。 この傾向は40歳から65歳の中高年でより顕著だったといいます。